COLUMN

管理栄養士の栄養コラム

老け顔の原因にも?!~噛みごたえから見る食事~

2021.11.30

栄養相談では、食事のタイミングや栄養バランスだけでなく『噛みごたえ』という視点からもアドバイスすることがあります。どんな食事の方が対象になるかというと、朝は、野菜ジュースだけとかパンとヨーグルト、あるいはお茶漬けやおかゆ、昼はそばやラーメンなどのめん類やカレー、夜はハンバーグやコロッケ、まぐろの刺身のような食事の方です。

噛むことは、骨格や胃腸に影響し、ガン、虫歯、肥満の予防改善の効果や、うつの予防のように心の健康にも関係することがわかってきています。また噛むことによる唾液の恩恵は感染症予防にもあるのでこのコロナ禍では重要な自己防衛のポイントです。

また、噛むことを意識した食事ができていると脳は活性化しやすいので、認知症とも深い関係があります。あまり噛まない食事は、脳の血流や唾液の分泌量も減り、口まわりの筋力が低下するなどの老化現象が早くあらわれます。ということは、今話題の顔のたるみ、『マスク老け』との足し算になるため老け顔になるスピードが早くなるので、油断禁物です。

噛みごたえのない食事の影響を受けた子どもは、柔らかい食事によってあごが小さく成長するため、小顔になります。しかし、それは喜んではいられません。やせていても睡眠時無呼吸症候群になるなど、成長してからその影響で悩む可能性もあるからです。

私達は、食べ物のおいしさを味だけでなく、噛みごたえからも判断しています。
ほどよい柔らかさはおいしく感じても、柔らかすぎで形がドロドロになるとおいしいとは感じないように『噛みごたえ』はおいしさを決める大切な要素です。

高齢になると、だんだん歯や歯茎が弱って、柔らかく、小さくしないと食べられない方もいれば、歳をとっても厚切りのステーキを食べ、ポリポリ、サクサク歯ごたえを楽しむ食事をされる方もいます。

どちらが、介護が必要になる時期が早いかは明確ですね。
歳をとってから食べる楽しみが奪われることほどつらいものはありません。
歯茎が弱る年齢になる前からジュースや粉末、食べやすい柔らかいもので栄養補給するのではなく、しっかり噛みごたえのある食事のとり方を意識することをおすすめします。
たまに楽しむことや、本当に困難な場合は問題ありません。しかし、野菜ジュースのように『簡単に栄養不足を補う』ことだけに気をとられ、習慣化すると、噛むことの積み重ねによる恩恵を逃してしまいます。

そしてそれは、朝食や昼食を抜くなど、1日3回噛むことをしないで、飲むだけで過ごされている方も同じことがいえるのではないかと私は思います。

自分の食事を噛みごたえの視点で振り返ってみてください。
めん類の多い方は定食やお弁当に。
薄く小さく切っていた野菜や果物は大きめに切り、たまには丸かじり。
脂の多い薄切り肉やひき肉は赤身の多いもも肉やひれ肉、
あるいは少し厚切りの肉にするだけでも噛みごたえのある食事になります。

身体は使わないと機能が低下するしくみがあちこちに潜んでいます。
噛みごたえを楽しむには『歯と歯茎の手入れ』は欠かせません。
生涯自分の歯でおいしく食べるためにも日頃の手入れと定期的な歯科での点検で、
心と体の健康を保ちたいものですね。

(管理栄養士 蛯原 啓子)

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