COLUMN
管理栄養士の栄養コラム
冷たいものは栄養が減る?!
2022.07.29
暑い夏は、ひんやりつめたいものがおいしく感じますね。
ビールやかき氷など冷たい食べ物や飲み物をとりすぎるとお腹が痛くなった経験をされている方もいらっしゃると思います。お腹が痛くなくてもいつもの便より緩く下痢気味になるような時は、しっかり食べていても大切な栄養が十分に消化吸収されていないということになります。
吸収されないということは、体力の低下につながりますから、このコロナ禍、感染症予防の観点からも避けたいものです。そこで今回は、冷たいもので栄養量を減らさない食べ方についてお伝えします。
私達の体は、気温が高く、汗がたくさん出るような場面や、スポーツをしているときは、適度に冷えた飲み物を摂ることにより、体内の温度を少し下げることで熱中症を防ぐことができます。
しかし、食事の時に働く、食べたものを消化して吸収されやすい形に分解する働きをする消化酵素には、最適な温度があります。それは私たちの体温である37℃前後です。消化酵素は、唾液や胃液、すい液(すい臓から分泌)、腸液から分泌されています。
『唾液』ではでんぷんの分解酵素が働き、肉や魚などのたんぱく質は『胃液』『すい液』『腸液』から、脂肪は『すい液』で消化吸収しやすくします。
ですから、冷えた飲み物などが多すぎると、一気に体内温度を下げてしまうため、消化酵素が効果的に働かないことになります。しかも、胃腸にある血管は、冷たい刺激によって収縮してしまうので血液の流れを悪くし、腸の運動を活発にさせてしまいます。するとますます消化不良となり、ひどい場合は下痢をおこしてしまうわけです。
私達の体は、どんなにバランスの良い食事をしても、消化されて吸収できなければ、体の栄養になりません。口に入れるまでよりもむしろ入れてから、どれだけ栄養を吸収するかが重要なのです。間違っても、痩せたいからと下痢でやせるようなことをすると、栄養障害で体力が低下するだけでなく様々な病気の危険性が高まります。
冷たいものが少量であったり、温かいものと一緒に食べたり飲んだりするときは、体内温度があまり下がりませんが「ビールに氷を浮かべたそうめんと冷や奴、デザートにスイカ」、あるいは「氷の入った飲み物に冷やし中華、デザートにアイス」など、よくある夏の食事は消化不良の条件が重なりやすくなります。せめて食後のお茶やコーヒーは温かいもので締めくくることができたら良いのですが、なかなか難しいことですよね。
そこで、どこでもできることは、氷入りを避けたり、一気飲みをしたりせず、ゆっくり飲む、ゆっくりよく噛んで食べることです。これは食べ過ぎや飲み過ぎの予防にもなり、内臓をいたわりながら効果的に栄養を吸収することができる食事のとり方です。
冷房の効いた中では、食事中や食後の水分補給は、常温や温かいものがおすすめです。
消化酵素の効きを良くする体に優しい食事の温度、今日からちょっと気にしてみませんか?
(管理栄養士 蛯原 啓子)