COLUMN

管理栄養士の栄養コラム

『高齢者 5人に1人は低栄養』離れて住む両親は大丈夫?

2020.12.25

厚生労働省の2019年の国民健康栄養調査では、65歳以上の高齢者のBMI(体格指数)20以下の【低栄養傾向】の割合は、
・男性:12.4%
・女性:20.7%
85歳以上では
・男性:17.2%
・女性:27.9%
と高齢者5人に1人は低栄養の可能性が高いと発表しています。

このコロナ禍で、年末年始に毎年帰省していた方も今年は見送るという声を多く聞きます。帰省は、低栄養に気づくチャンスなのですが、会わないことで見逃してしまうことが予想されます。高齢者は、自立して生活できていても、食事量が減ると感染症のリスクも上がってきます。中には認知症がゆっくり進行していることが原因で、きちんと食事ができず、健康診断の数値には表れないところからじわじわ体調に影響することもあります。

下記の発言があったら要注意!!

1. 「1日2食になった」「食欲がない」
2. 「肉は食べたくない」(以前は食べていた場合)
3. 「太っているし、動かないからそんなに食べなくても良い」

食事の回数が減ると入る栄養や水分の摂取量も減り、体調不良や痩せる原因になります。
そして、噛む、飲み込むという口やのどを使う機会が減り、免疫力にも関係する唾液量の減少にもつながります。見た目は太っていても、肉や魚、卵、乳製品などの良質なたんぱく質が不足で体重が減るときは、脂肪だけでなく大事な筋肉も減ります。筋肉は、手足の筋肉だけではなく、内臓や肛門も筋肉で作られていますので全身の体力が低下します。
すると飲み込みが悪くなる、便秘で食欲が低下する、など必要な栄養量がとれなくなります。そのほか、一旦食べられなくなると、睡眠の質が低下し、心の元気もなくなるなど自然に回復することが難しくなります。

1日歩かなくても、内臓を動かし、細胞や血液を作り変えるための栄養は必要です。
高齢になると栄養の吸収力も低下してきます。起きている時間を三等分に分けて少量ずつでもよく噛んで、しっかり栄養補給することは重要なことです。特に朝食の栄養不足は睡眠や筋肉に影響するので、介護が必要な寝たきりの始まりにもなりかねません。

電話は低栄養をチェックできる貴重な道具です。スーパーで何を買ってきたかや食事のメニューなどを尋ねてみましょう。食事の写真を送りあうこともおすすめです。同じものばかり食べていたり、買い物がおっくうで菓子パンやラーメン、まんじゅうなどの炭水化物ばかりだと低栄養が疑われます。

ぜひ、食事の話でコミュニケーションを増やして低栄養の予防や発見のできる年末年始をお過ごしください。

(管理栄養士 蛯原 啓子)

栄養コラム一覧へ
ページの先頭へ戻る